人間がへた

誰のためにもならないことだけ書きます。半径三メートルの出来事と、たまに映画と音楽。

日常における映画の登場人物ぽいシーン番付ベスト3

私用と社用のスマホを二台とも画面を割ってしまったので、修理に出した店の隣にあるドトールでパソコンだけを持ってこれを書いている。

精密機器であるスマホを二台とも落として割る、白痴的行為については自分でもどうかと思う。なんならこのドトールに入って着席した五分足らずで、コンビニで買ったハンカチが入っていた包装を落とし、レジで取ったwifi接続手順が記載された紙を落とし(ちなみに携帯が無いのでwifi接続は出来なかった)、パソコンだけでもwifi接続できないか店員に聞きに行って席に戻るとイヤホンが床に落ちていた(ちなみにパソコンだけだとやはりwifi接続は出来なかった)。

横に座っていた男性が、「こいつ一体どんだけ物落とすんだ」という顔でこちらを一瞥したが、彼はわたしがここにいるそもそもの理由が、スマホを落として画面を割ったせいであることを知らない。

自然と物を落としてしまう、そういう職業があるのならわたしはセミプロの域に達していると言っても過言ではないだろう。職業病のようなもんである。

もしわたしがマジシャンであったならば、席についてパソコンを取り出そうと開けた鞄からハトが飛び出し、タバコに火をつけた瞬間に先端に花が咲き、そしてわたしも椅子から若干浮いているだろう。その場合、横の男性は「マジシャンがいる」と感嘆の表情でわたしの一挙手一投足を見つめる。サインを求めるためのメモ帳があったかな、と思いを巡らしながら。ここでの不幸はわたしの職業がマジシャンではなかった一点につきる。もっとわかりやすい職業だったなら、こんな誤解は生じなかった。ていうか物を落とすプロでもないのだが。そんなプロいてたまるか。

閑話休題。話を戻そう。そういったわけで暇なので、この記事では表題の通り、わたしが日常生活を送る上で「あ、今のわたし映画のワンシーンみたい」と感じる瞬間ベスト3について紹介したい。

ちなみに今ドトールでタバコを吸いながらこの記事を書いている状況も、もしここが少し寂れた個人経営のこだわったコーヒーを出す店だったならば、『コーヒー&シガレッツ』的シーンとして一候補に挙がったのだが、いかんせんドトールなので番付落ちである。今飲んでるの、アイスティーだし。

わたしは基本的に裸族なので、部屋にいる時の正装はTシャツにパンツ一丁である。暑い時なんかはTシャツすら着ていない。これだけだと単なる怠惰な26歳女のクソに近い日常の一コマであるが、ここに特異性が生まれる瞬間がある。外出の予定がある前に、風呂に入り化粧を済ませ髪を巻く。洋服を選ぶ前に、とりあえず下着だけを身に着けて換気扇の下でタバコを吸う、この瞬間である。完璧に仕上がったばかりの女が、まだ洗っていないコップや皿の置かれた生活感のあるシンクの横で、下着だけで虚空を見つめてタバコを吸う、そのアンバランスさ、その奇異性。映画の冒頭にありそうな一コマである。是非とも是枝監督に撮って欲しい。

次に、満員電車、出来れば夜の方がいいが、出入り口にもたれかかって外を眺めている時。これは確実に『ガールオンザトレイン』から連想されている。満員電車というのは、多くの他人が肩と肩を擦り合わせながら移動する乗り物なので、それ故に刹那的な物語が生じやすい場である。酷く酔った様子の若者を挟んで、目の前に座る人と目だけで苦笑の気持ちをやり取りする瞬間。ドアのガラス越しに目が合ったどこの誰かも知らぬ人が、どんどん小さくなっていく光景。赤の他人と密着している特殊な空間なのに、皆当たり前のような顔をして、わたしの横を通り過ぎていく、その違和感。これは西川美和監督にお願いしたい。残業後に疲れて電車の窓によりかかっておくので、発車と共にわたしが遠ざかっていく様子を、ちょっと間延びした感じで撮ってください、と。多分たっかいカメラでどつかれる。

しゃっくりが止まらなくて友達と笑いあっているシーンなんかもいい。必死に息を吐いたり吸ったり、コップの向こう側から水を飲もうとして服がびしゃびしゃになったりするところを、三木聡監督に『インザプール』的ユーモアを利かせて描写してほしい。そこでいきなり日本刀を持った男衆たちに惨殺とかされる場合は園子温監督でいい。BGMはもちろん『バラが咲いた』。是非とも凄惨に殺してもらいたい。

あとは昔付き合って一か月足らずで別れた男に、寝ている時に勝手に服を脱がされて何やら始めようとしている時に目が覚めたシーン。これは「警察24時」とかで特集されたのちに逮捕されて死刑になっていてほしい。まあ撮ってもらうなら引き続き園子温監督だろうが、彼よりも先にAV監督からオファーが来そうだ。謹んでお断りさせて頂く所存である。

学生時代に暇すぎて近所の公園で昼下がりに一人でシャボン玉を吹いていたシーンとかも良さそうだ。いい感じにトチ狂っている。子どもは警戒心がないのでワラワラと寄ってきていた。『菊次郎の夏』とかにありそうなので北野監督にお願いしたい。もちろん遠巻きにこちらを不審そうに伺うお母さん方もセットで。1ボトル吹き終わったら飽きたので残りはそのへんの子どもにあげたが、あのシャボン玉は活用されたのだろうか。お母さんに「捨てなさい!そんなもの」と奪われてなければいいが。

暫定版ベスト3

1.半裸で換気扇の下でタバコを吸うシーン

2.昼下がり公園で一人シャボン玉を吹くシーン

3.しゃっくりを我慢してたら男衆に惨殺されるシーン

まあこんな感じだろう。

3に至ってはもはやただの妄想になっているが、ありそうなので入れておいた。吸う、吹く、止める、という軸で設定した。いずれまた更新したい。