人間がへた

誰のためにもならないことだけ書きます。半径三メートルの出来事と、たまに映画と音楽。

片田舎のファンキーとモンキーとベイビーは今日も方向性の違いで揉めている

正月に帰省した時、母と話していると父方の祖父の話題になった。近所のおっさんと取っ組み合いの大ゲンカをしたらしい。記憶では祖父はもう80になろうかという年齢だった気がするが、何がどうなればおっさんと齢80間近のジジイが組み合うことになるのか。相撲大会でもあるまいし。

うちは開業医をしているので1階が医院、2階が自宅という作りになっており、医院の駐車場を挟んだ敷地内に祖父母の一軒家が建っている。スープが冷めないどころか熱々で舌ベロベロの徒歩10秒圏内に祖父母が生活しているが、現在我々と祖父母の関係は断絶している。両親はもう数年まともに祖父母と会話をしてないらしい。兄弟は知らんが、わたしも滅多に実家に帰らないのもあってか言われてみれば祖父母と数年顔を合わせていない。

面倒なので詳細は省くが、父方の祖父母はちょっと頭がヤバめのファンキーモンキーベイビーズなのだ。なんというか、ネットで「田舎の嫌なところ」と検索すると「詮索好き」とか「排他的で頑固」とか「男尊女卑の風土」とか色々出てくると思うが、とりあえずそのへん全部当てはまると理解してくれりゃいい。そういう性格からかしょっちゅう近隣住民と小競り合いを起こしていたのは時折聞いていたが、取っ組み合いは初である。

中国地方のファンキーモンキーベイビーズのファンキー部分を担う祖父は畑を持っている。片田舎にある畑は、地続きの同じ土地のように見えても、実際は全くの他人同士が区画ごとに権利を保有している場合がある。祖父も、近所にそのタイプの畑を持っている。土地を隔てる目印はというと、簡素な杭だけで区切られているだけのことが往々にしてあるのだ。

大抵は、上手にお隣さんと付き合いながら問題なくやれるはずだが、そこは我が家のファンキー担当。常識が通用すると思ったら大間違いである。推察するに「もうちょい敷地欲しい」と思ったであろうじいちゃんは、敷地を区切る杭を、微妙に相手側にズラしていくという非常にこすっからい手口で領土の拡大を図ろうとしたらしい。当然相手も気付いて元の位置に打ち直し、それをまたじいちゃんがズラし、と驚くほど地味な攻防を繰り広げた後に、相手方がブチ切れ、逆切れしたじいちゃんもブチ切れ、そして取っ組み合いに至ったそうである。

そらそうだわな、と缶ビール片手に話を聞いていた。ここでいう「そらそうだ」は「そら(他人の領地奪おうとした挙句に逆切れかましたら、相手方も会話ではなく拳という手段を取り)そうだ」の意である。決してじいちゃんに肩入れしたわけではない。わたしにもファンキーの血は受け継がれているとは言え、血の運命にも抗い続けていく気持ちはある。

近所の方から我が家に通報があったらしい。「あんたとこのじいさんが取っ組み合いの喧嘩してるで」と。ここらへんの田舎ネットワークに関しては光通信よりも早い。警察をブッ飛ばして直接家に電話がかかってくる。都会だとこうはいかないでしょう。

昼時、父は診察中だったらしいが、喧嘩を止める方を優先したらしい。ここは医師である父の判断が正しかっただろう。風邪やら腹痛やらは十数分放っておいても死なないが、この喧嘩は放置すると人死にが出る。もちろん死ぬのはうちのじいちゃんである。

徒歩5分の畑までの道中を、父は白衣にサンダルで駆けていったそうだ。光景を想像すると北野武山田洋次が撮りそうな感じで良い。是非土手を走る父を引き目のパンで撮って欲しい。

ファンキーの元にベイビー担当も到着。担当というか、文字通りファンキーのベイビーが到着。詳しくは知らんが、ファンキーもベイビーもまだピンピンしてるので何とか場は収まったんだろう。騒動に登場しないモンキー担当の祖母が何をしてたかというと、恐らく家で寝てたであろう、とのことである。

ファンキーとモンキーとベイビーたちの血を引き継ぐわたしが言えることは一つ。

はよ解散しろ。

以上である。