人間がへた

誰のためにもならないことだけ書きます。半径三メートルの出来事と、たまに映画と音楽。

ハイボールダブルの呪い

わたしは酒が好きだ。これは自他ともに認められている。週9とかで飲んでいるときもある。週7日という自明の理を自力で突破した酒飲みはそういないでしょう。

そして強い方だとも思う。数杯飲んだ程度ではケロっとしていられる。ただタチが悪いのは酔いが急に回る点である。

一般的な酔いの回り方は、グラフで言うと綺麗な右上がり直線で描かれると予想するが、わたしは違う。平坦な直線が続いた後に突如急上昇する。飛行機の離陸曲線に近い。長い直線で溜めて溜めて、そして飛び立つ。飛行機と違うのはちゃんと定時で着陸しないところか。飛びっぱなし。そして記憶も行方不明だ。数多の飛行機や船舶が飲み込まれたバミューダトライアングルの如く、酒によってわたしの意識上にも魔の海峡が生まれている。

酒飲みの印象が定着したせいで、友人もわたしに酒を飲ませることをあまり厭わない。少し遅れて飲み会に合流すると、必ずハイボールダブルがデンと机に置かれている。「今日はちょっと控え目にしよう」と思っていてもお構いなし。普通のハイボールだと薄すぎてかったるいので、常々「ハイボールダブルで」と注文していたのが友人間で完全に浸透してしまった。こういうことを人は自業自得と呼ぶのだろうが。

おかげでここ数ヶ月で二度も財布を落とした。初回の紛失後にカード類がようやく整ってきたので、新しく財布を買ったら5日後にまた落とした。ちなみに両方ともFendiの財布だった。Fendiの新作モデルを東京という街にバラまき続けている。頭がイカれた金持ちでもやらない戯れ。

ちなみに数日前にまた新しく財布を購入した。さすがにFendiはやめた。二度あることは三度あると言うので、万が一再び失くしても許せる程度の損失額と心理的ダメージのブランドから選定した。目立つ方が失くさないだろうと思い、真っ赤な財布を持つことにした。妥協はありつつも、なかなかキュートなデザインで気に入っていた。

早速友人に財布を見せると「赤い財布って運勢最悪だよ」と言われた。続けて「こんな真っ赤な財布、どんな気分のときに買おうと思うの?」とも。

水を差すどころか滝である。なんなんだこいつは。財布運だけでなく友人運も悪いのか。ハイボールに人生を狂わされている。飲んで記憶を失くしてリセットしよう。そう決意した金曜の夜。今日も離陸致します。